メッセージ

みなさん、こんにちは。領域代表の土谷です。

クオリア構造学の創成がついに2023年4月にスタートしました!



我々の主観世界は、一体どれだけ共有されているのでしょうか?

主観世界の問題は、哲学的な問いです。

一方、社会的にも、異なる主観世界を持っている人が我々の社会を構成していることも、現実的に重要な問題です。



(注:上の顔画像はAIで生成した実在しないものです)



しかし、この主観、意識の中身、クオリアは、歴史的には、科学にならないとされました。

外から観測できる行動、に集中する行動主義。その影響は広く、人文社会科学、自然科学に及んでいます。

最近成立した科学的な意識研究においても第一、第二世代の研究では、クオリアの問題には深く立ち入りませんでした。



そこに反旗を翻したのが、我々のクオリア構造学です。

クオリアを関係性から特徴づける、というパラダイムを、圏論という構造を特徴づけるために生まれた数学、とくに、米田の補題と呼ばれる定理に基づき、確立しました。

圏論の考えを応用して、構成主義という教育・発達理論に大きな影響を与えたピアジェの理論を再考する、などの成果が得られています。

米田の補題のアイデアを用いて色クオリアの間の類似度、という関係性を実際に計測しました。たとえば、機械翻訳の最適輸送法、という新しいアルゴリズムを用いて、

健常者の間では、上手くクオリア構造を対応づけられることを示しました。



この結果と、哲学で長らく論じられてきた逆転クオリアの議論についての関係性を論じる論文を現在準備しています。一方、この複雑な色クオリア構造と、シンプルな色の言語ラベル構造との対比から、言語の意味とクオリア、「言語はクオリア共有のために生まれた」仮説、というアイデアの論文化を進めています。

この考え方をさらに広げ、感情クオリア研究を行います。


さらに、哲学現象学の媒介論に基づいてタスクを考案しました。現在1000本の短い動画について、それぞれのペアについて、それらを見た時に感じる主観的な感情の類似を答えてもらう、という実験をすすめています。

ここから得られる感情クオリア構造を起点に、発達・脳・言語・文化・社会といった観点から、その構造の変化を定量的に捉える予定です。



われわれは、関係性でクオリアを理解する、という新しいパラダイムをもとに、これからも様々な新しい共同研究を行う予定です。

(アイデアがありすぎて、有限時間でテストできるのかが心配になるほどに!)

それにより、意識研究の第三世代を、国際的にリードしていきます。

最終的に、他者理解を深めることで、新しい人間観を導くことに貢献したいと考えています。



これからの5年間、興味を持たれた研究者の皆様については、公募班員としての参加や、様々な領域企画への参加をよろしくおねがいします。

また、クオリア・意識に興味がある、という一般の皆様も応援のほどよろしくおねがいします。


土谷 尚嗣 2023年4月3日